1.4 機能性食品
近年、さまざまな機能を有した食品成分が見いだされ(p. 94)、健康志 向と相まって「機能性食品」という概念が取り入れられるようになりました。
(1)保健機能食品
保健機能食品は、国の許可等の必要性や食品の目的、機能等の違いによ って、「特定保健用食品」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の 3 つに 分類されます(図 1.5、表 1.2)。この制度は、食品に求められる機能が複 雑かつ多様化し、多種多様な機能を持つ新しい食品の開発が行われるなか、 消費者の食品に関する適切な情報提供に対する要望の高まりや、不適切な 表示や摂取方法などによる食品に対する健康危害や苦情が散見されるなど の状況をふまえ、さらに消費者にとって正しい情報に基づく選択肢が増え ることも考えて作られました。
●特定保健用食品
体の生理学的機能や生物学的活動に影響を与える保健機能成分を含み、 食生活において特定の保健の目的で摂取するもので、その摂取により当該 保健の目的が期待できる旨の表示をする食品です(図 1.6 ①)。食品を特 定保健用食品として販売するには、個別に生理的機能や特定の保健機能を 示す有効性や安全性等に関する国の審査を受け許可(承認)を得なければ なりません。表 1.3 に特定保健用食品の例をあげました。
●栄養機能食品
体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分(無機質、ビタミ ンなど)の補給・補完を目的としたものです。高齢化や食生活の乱れなど により、通常の食生活を行うことが難しく、1 日に必要な栄養成分を摂取 できない場合などに、栄養成分の補給・補完の目的で摂取する食品です。
図1.5 食品、いわゆる健康食品と医薬品
[厚生労働省 健康食品 HP、消費者庁食品表示課 HP より作図]
一般食品(いわゆる「健康食品」*を含む) 機能性の表示ができない
( 医薬部外品を含む)医薬品 特定保健用食品
(個別許可型) 栄養機能食品
(規格基準型)
自己認証/届け出不要 機能性表示食品
(届出型) 事業者責任
【対象成分】
・ビタミン 13 種、ミネラル 6 種
・n-3 系脂肪酸
個別審査あり
・疾病リスク低減表示
・条件付き特定保健用食品
個別審査なし
・規格基準型
医薬品食 品
*栄養補助食品、 健康補助食品、 栄養調整食品など
保健機能食品 機能性の表示ができる
表1.2 保健機能食品の制度
制度 対象食品およびその形状 表示内容
機能性表示食品
届出型(一定要件を 満たせば事業者責任 で表示)届け出先:消費者庁
生鮮食品を含めすべて の食品。ただし、特別用 途食品(特定保健用食品を 含む)、栄養機能食品、アル コールを含有する飲料や脂 質、コレステロール、糖類(単 糖類または二糖類であって、 糖アルコールでないものに 限る)、ナトリウムの過剰な 摂取につながるものを除く。
科学的根拠に基づいた機能 性について、事業者責任で
(一日あたりの摂取目安量あたり表示 の機能性関与成分含有量、摂取 方法、注意喚起事項、事業者の 連絡先などを表示)
栄養機能食品
規格基準型(自己認 証)国が定める基準
・ 通常の食品の形状(加 工食品、生鮮食品)
・ 錠剤・カプセル等の 形状
・ 国が定めた表現で栄養機
・ 栄養成分含有および熱量能表示
・注意喚起表示
特定保健用食品
個別審査許 可型 個別審査なし
通常の食品(加工食品) 国 が 審 査
し、 消 費 者 庁 長 官 が許可
個別審査あり ・ 栄養成分含有表示・ 特定の保健の用途の表示
(栄養成分機能表示)
・ 注意喚起表示
好き る栄養学 第 2 版 追加資料(1 刷用)
2015 年 4 月より、「機能性表示食品制度」が始まりました。それに合わせて、『1.4 機能性食品(p.14 ∼ 16)』および『Pick up 特別用途食品(p.17)』の内容につい
て、以下に差し替えをお願いいたします。 (講談社)
栄養機能食品と称して販売するには、国が定めた規格基準に適合する必要 があり、その規格基準に適合すれば国などへの許可申請や届出の必要はな く、製造・販売することができます。許可マークはありません。
●機能性表示食品
機能性を表示できる食品として、新しく加わった制度に基づく食品です。 安全性の確保を前提として、科学的根拠に基づいた機能性(健康の維持 および増進に役立つ、特定の保健目的が期待できる機能)が事業者の責任 において、食品表示基準等に基づいて表示されるものです。
販売前に、安全性および機能性の根拠に関する情報などが、消費者庁長 官に届けられたもので、個別の許可を受けたものではありません。
(2)健康食品(健康補助食品)
健康補助食品を定めた定義は現在ありませんが、非常に多くの種類があ ります。一般的に、保健や健康維持の目的で用いられ、通常の食品とは異 なる形状(カプセル状、粒状、ドリンク状など)の食品と考えられていま す。 経口的に摂取するものであり、一般食品に分類されます。
なお、公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(JHFA)が、独自で、「含 有成分など製品規格」、「製造・加工などの基準」、「適正な表示」の 3 点に ついて審査を行い、品目別規格基準に合格した製品に対しては、協会が JHFA 認定マーク(図 1.6 ③左)の表示を許可しています。
また、JHFA と一般社団法人 日本健康食品規格協会(JIHFS)が、健康 食品の品質に関する厚生労働省の「健康食品 GMP(Good manufacturing practice)ガイドライン」に基づいて、GMP を順守している工場か否か の審査を行っており、認定された国内工場で作られた健康食品に GMP マ ーク(図 1.6 ③右)が付けられています。原材料の受け入れから製造・出 荷するまでの全過程において、製品が安全につくられ一定の品質が保たれ ていることを示しています。なおこれらは国が定めた制度ではありません。 表1.3 特定保健用食品の例
・お腹の調子を整える食品(オリゴ糖を含む食品、乳酸菌を含む食品、食物繊維を含む食品)
・コレステロールが高めの方の食品
・血圧が高めの方の食品
・ミネラルの吸収を助ける食品
・むし歯の原因になりにくい食品
・血糖値が気になり始めた方の食品(糖の吸収をおだやかする)
・食後の血清中性脂肪値が上昇しにくい食品
図1.6 食品の認定マーク
▶②の特別用途食品のマークでは、区分欄に、乳児用食品、妊産婦用食品、病者用食品 など該当する特別の用途を記載。
②特別用途食品
①特定保健用食品 ③健康食品の認定マーク
病者用食品 【許可基準型】
低たんぱく質食品 アレルゲン除去食品 無乳糖食品 総合栄養食品 【個別評価型】
妊産婦、授乳婦用粉乳 乳児用調製粉乳 嚥下困難者用食品 特定保健用食品 特別用途食品
図 1.6 ②は、特別用途食品のマークです。「特別用途食品制度」 とは、乳幼児、妊産婦、病者等の発育、健康の保持・回復等に適 するという特別の用途の表示の許可制度です。特別用途食品には
特 別 用 途 食 品
(注) 特 定 保 健 用 食 品については、 特 別 用 途 食 品 制 度 と 保 健 機 能 食 品 制 度 の 両 制 度 に 位 置 づ け ら れ て い る。
以下のようなものがあり、特別用途食品として食品を販売するには、その表 示について国の許可を得る必要があります。なお、高齢化の進展や生活習慣 病の増加、医学や栄養学の進歩や栄養機能表示制度の定着などの状況の変化 を踏まえ、対象者の栄養管理に適切な食品が供給されるよう、2009 年(平 成 21 年)4 月 1 日より新しい制度が施行されています。
豆知識●[健康食品]1984 年(昭和 59 年)には、健康食品(健康補助食品とほぼ同義 語と考えられる)を「栄養成分を補給し、特別の保健の用途に適するものとして販売の 用に供する食品」と規定されていたことがあります。
以下も、変更をお願いします。
☆ p.18『調べてみよう! 食品の表示』
図 栄養表示の例 (旧)ナトリウム 37mg →(新)食塩相当量 0.1g